【天声人語】2006年05月17日(水曜日)付

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2007-03-31 15:11
写私信
楼主#
  地中海に面したアフリカのリビアという地名は、古代ギリシャのころの著述に登場する。「リビアの奥地に入ると、そこは人も住まず水もなく、獣も棲息せず雨も降らず樹木もない荒野で、ここには水気のあるものは全くない」(ヘロドトス「歴史」岩波文庫??松平千秋訳)。

  リビアの地底に石油という燃える水気があるとは、「歴史の父」ヘロドトスも気づかなかっただろう。その大量の水気が、今ではこの国を支えている。

  1969年に共和国になり、カダフィ大佐による独特の路線を歩んできた。米国とは長く敵対的で、レーガン大統領は大佐を「狂犬」と呼び、首都トリポリを空爆したこともあった。

  ライス米国務長官が、リビアに対する「テロ支援国家」リストへの指定を近く解除して、26年ぶりに国交を完全に正常化すると発表した。911の同時多発テロ後の03年に、リビアが大量破壊兵器の開発計画の廃棄を発表したことなどを評価したためという。

  ライス長官は、イランと北朝鮮の指導層に、リビアと同様の戦略的決定を下すよう促した。大量の核兵器を持つ米国が、まず自ら劇的に削減しないのは解せないが、核兵器がこれ以上つくられないことは望ましい。

  大量破壊兵器の存在を旗印に、米国はイラク戦争を始めた。しかし、それは見つからず、多くの命が失われた。リビアとの今回の無血での正常化を機に、米国は先制攻撃を自制すべきだろう。ヘロドトスは、こうも述べた。「平和の時には子が父の葬いをする。しかし戦いとなれば、父が子を葬らねばならぬ」

朝日新闻社
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