読書メモ:「長崎ぶらぶら節」(なかにし礼) (3)
第三章 あらすじ: 大正十一年、愛八さんも五十近くなってきた。 欧州大戦によって出来上がった日本の「船成金」たちは、戦後の不況と「ワシントン軍縮条約」などの制約で窮地に追い込まれている。それに正反対とも言えるほど、丸山の花街は、船成金たちの役人接待運動のお陰で、大繁盛を迎えてきた。しかし、成金たちの遊び方は雅と無縁で、芸より悪趣味の騒ぎのほうが好んで、何と、芸者達に懸賞金掛けの相撲大会をやらせた。 ある日、もともと相撲ずき(もちろん観戦だけ)で知られた愛八さんも皆に煽てられて、芸者相撲の土俵に入って、今までの観戦経験を活かして、優勝を手にした。 でも、御祝儀をもらって夜更けの帰り道を歩く愛八さんの胸に、ただならぬ風波が立った。こんな生き方が本当に正しいかと。 今まで、愛八さんは自分が芸者の水に合っているし、芸でお客さんを喜ばせることが自分の生き甲斐だと堅く信じている。稼いだお金は右から左と言ってもいいほど、気前よく、人助けに尽くし、好きなことに残らずに使ってしまった。 しかし、世の中は変わったようで、自分もだんだん年を取って、いつまでもこういう生活が続いてもいいのか、また、続けるかどうかという不安が秘かに湧いてきた。それに留まらず、そろそろ芸者をやめようかとまで、彼女は始めて思いついた。 では、主人公の愛八さんは本当に芸者をやめるか、やめて何を頼って暮らしていくか、どんな生活、どんな運命が前方で彼女を待っているだろう。 文章の素晴らしい所: 始めと終いに晩鐘の響きを描写して、前後呼応の形で、主人公の人生への考えに虚しい色を染め付けようとしている。 2016-06-23 |
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