読書メモ:「長崎ぶらぶら節」(なかにし礼) (八)
あらすじ: 十一月に入り、古賀十二郎と愛八さんはようやく歌探しをやり出した。 古賀十二郎の下調べにより、長崎市内では、少なくとも三十の埋もれた歌に出会える可能性がある。それで、彼らは毎週の日曜日に町の古老や有力者の家に押しかけて、「古くから伝わる長崎の歌を覚えてませんか」と訪ねていくのである。 どんな仕事も同じように、すぐには上手く行かなかった。それどころか、彼らの「怪しい行動」は人の疑いをも招いた。 「食っていくだけですでに手一杯なのに、歌とは、何や?」 「歌さがしを口実に、逢引してるのと違うか」などの風説も立った。 お互いに励まし合い、根気よく続けているうちに、やっと始めての収穫があった。それは人の白目を受けて、半年が立った後のことである。 では、古い歌って、一体どんなものなのか、一つ見てみよう: 「あとしゃま とーと ぜんぜ ひゃーく おーせっけ あーぶら こーでしんじょ」 なに?それ。 いや、別にそんな驚く必要がない。古い歌だから、分からないのも当然だろう。 現代文に訳したら、こうである: 「お月様 どうぞ 銭 百文 ください 油を 買ってあげましょう」 子守唄だそうだ。ほかにもまだまだあるが、ここでは省略させて頂く。 歌だから、文字だけではなく、節もある。それは愛八さんの本領の発揮する所である。彼女は独自の記号で歌詞に傍註している。やはり、古賀十二郎に見込まれるのはそれなりの理由があるのだ。 昼間は町で採集して、夜は二人で古賀十二郎の書斎で整理しなければならない。しかし、部屋に蚤か虱かダニか分からないがなにかの虫がいたので、痒くてたまらない。 愛八さんからそんな苦情を花月の女将さんの富美江に言ったら、「うちに部屋がいくつもありますけん。客のおられん時は好きに使うてくださいまっせ」と親切してくれた。 それで古賀十二郎と愛八さんは本当に花月に行くかどうか、行ってどんなことに触発されるのか、次の章を待ちましょう。 2016/07/01 |
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