「もしお昼ご飯を食べている最中なら、いまラジオを切ったほうがよいかもしれません」
第二次世界大戦でドイツの敗北が目前に迫る45年4月、米CBS放送のエド マロー記者はそう言って、連合軍が解放したばかりのドイツ中部のブッヘンバルト強制収容所のリポートを始めた。 収容されていた2万人は飢えと結核で1日200人の割合で死んでいた。庭には骨と皮だけの遺体の山があった。生きている者も死相が現れている。 「私はここで見、聞いたことのほんの一部を伝えたに過ぎない。そのほとんどについて、私は語る言葉を知らない」(田草川弘「ニュースキャスター」、中公新書)。ジャーナリズム史上に残るこのリポートが放送されたのは、実はマローが収容所を訪れた3日後だ。他社の記者が一刻を争って衝撃的なニュースを世界に伝える中、彼は自分の見たものを伝える言葉を吟味し続けて、抑制された文章にまとめ上げた。 マローといえば、50年代前半、米国で反共ヒステリーが荒れ狂った「赤狩り」の時代に、その立役者だったマッカーシー議員の虚言を暴いて、政治の流れを変えたことで有名だ。日本で公開が始まった米映画「グッドナイト&グッドラック」もその時のマローが主人公である。 彼の原点には、強制収容所のリポートで見せた言葉の持つ力とその限界に対する鋭い感覚があったと思う。マローは収容所で生き残った人の言葉を伝えている。「ここについて書くには最低2年はいなければなりません。でも2年もいたら、何も書きたくなくなりますよ」 朝日新闻社 |
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板凳#
发布于:2014-12-06 09:13
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